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インドネシア国家行政院の職員を対象とした「人事評価システム」研修プログラムの実施

アジア 国際研修

 インドネシア国家開発企画庁(BAPPENAS)は、2012 年より世界銀行からの借款を活用して行政館人材育成事業であるSPIRIT(Scholarships Program for Strengthening Reforming Institutions)を実施しています。JICE では2012 年9 月、2013 年4 月、2015年9 月に各1 コースの実施を受託し、今年度は3 コースを受託予定です。
 その一つとして、2016年10月16日から10月29日までの期間、インドネシア国家行政院(以下、「LAN」と表記)の職員15名を対象とし、人事評価をテーマとした訪日研修プログラムを実施しました。LANは同国において公務員人事行政を担う中央行政機関の1 つであり、傘下に公務員研修所を有し、全国の国家公務員対象の研修(階層別)を実施しているほか、人事管理や行政改革に関する様々な調査・研究をおこなっています。
 LANでは現在、全ての中央省庁での活用を視野に、目標設定と計画、計画に基づく業務の遂行、業績の評価の一連のサイクルの効果的な運用のための制度設計が模索されています。こうした要素に係る日本の事例から示唆を得るため、昇進・改革・能力開発センター長の Pangihutan Marpaung氏を団長及び中間管理職層から選抜された14名が来日しました。

 日本での研修プログラムは、人事院による研修、人事評価において独自の試みをしている地方自治体の訪問、日本の公務員を対象に行われている評価者研修の体験、日本の民間会社における事例、日本の新しい動きとしてボトムアップを目指す人材評価の考え方、360度評価の事例を紹介しました。

 人事院は日本の国家公務員の人事管理を担当する専門機関として、本研修の主要な講義についての講師派遣、公務員研修所の訪問など多大なご協力をいただきました。研修最初に、大部屋でのチームワークという働き方の特徴を学び、その上で、実際の人事院事務総局国際課の執務室を訪問し、4~5人が机を向かい合わせてチームで業務を進めるレイアウトを見学しました。作業割り当は個々人で決められているLANと異なり、グループ単位で行われる日本の方法を体感してもらい、昇進、異動をはじめとしてその後の研修につなげていきました。人事院の公務員研修所を訪問した際には、参加者達は入省したての職員と幹部職員も同じ宿泊施設に泊まることに驚き、省庁合同の3年目フォローアップ研修の様子を興味深く見学していました。

 地方自治体としては人事評価に相対評価を取り入れている大阪府を訪問し、人事評価についての説明を聞きました。目標設定と共有、評価要素と基準など具体的な説明が大変に参考になったと参加者達は感想を述べていました。

人事院公務員研修所の視察
大阪府の人事評価制度について、熱心に質問をする参加者

 一般財団法人公務人材開発協会(菊地敦子代表理事)の武田恒一講師より、日本の公務員を対象として行われている評価者研修について、評価者が陥りやすいエラーとその対応策、評価者の役割を講義と演習を通して学びました。

 学校法人産業能率大学総合研究所の金津健治講師からは、日本企業における目標による管理事例から目標設定について、講義と演習で学びました。目標管理の展開サイクル、目標の連鎖、成果の捉え方などについて、経験豊富な講師より具体的な事例まじえた説明に参加者は熱心に耳を傾けていました。

 新しい考え方、試みの紹介として、人材育成型の人事考課制度である岸和田方式の立案・導入・運用を中心となって進めてきた小堀喜康講師より「職員と組織を元気にする人事評価」のテーマで講義いただきました。この講義から得たボトムアップという考え方によって、自身の視野が広がり大変有意義であったという参加者は感想を述べていました。

 最後にテルモ株式会社から、360度評価としてテルモ株式会社でおこなっている「360°アンケート」についてお話を伺い、世界をリードするイノベーションを生み出す人材を育成する組織づくりのために360°アンケートは活用されていることを学びました。説明の後、テルモメディカルプラネックスというテルモ社の研修施設を訪問しました。参加者は、メディカルプラネックスを訪問したことで、360°アンケートを活用した自由闊達な風土から先進の医療製品が生み出されることが実感として伝わったとコメントしていました。LANでも360°評価は実施に向けた準備を行っており、テルモ社の事例は大いに参考になったということでした。

グループ演習の様子
目標設定についてグル―プで検討する参加者

 研修に加え、JICEでは、大阪城見学、友禅染め体験、日本食など日本の文化についても紹介する機会を設けました。

快晴の下、大阪城見学を楽しむ
友禅染めに熱心に取り組む
味とともに和食の盛り付けの美しさも楽しむ

 インドネシアでは国全体として行政改革ならびに行政官の資質向上が急務となっており、今回の研修の成果が実際の業務に活かされることが期待されます。

閉講式後の集合写真
横道清孝(GRIPS副学長)理事(前から2列目の左から5人目)、Pangihutan Marpaung団長(前から2列目の左から6人目)、山本朗 人事院事務総局国際課長(前から2列目の左から7人目)

JICEは今後もBAPPENASを初めとするインドネシア関係機関との連携を維持・強化し、インドネシアの人材育成に貢献いたします。

研修事業部 海外協力課
里吉 のり子