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「江蘇省衛生健康委員会・JICE医療交流10周年記念式典」「日中医学交流フォーラム記念講座」を開催しました

アジア 国際研修

 JICEは2022年11月18日、江蘇省衛生健康委員会、江蘇省外事弁公室との共催により「江蘇省衛生健康委員会・JICE医療交流10周年記念式典」および「日中医学交流フォーラム記念講座」を開催しました。

 JICEは2012年、江蘇省衛生庁(当時)との間に医療衛生分野における協力協定を締結しました。同協定に基づき2019年度までに医師研修を8回実施、計97名の医療関係者が参加し、江蘇省の医療レベル向上、日中医療関係者の相互交流の発展に寄与してきました。2015年に江蘇省で開催した衛生庁とJICEの共催による南京医療交流会には、日本から29名の医師にご参加いただき、大規模な交流が実現しました。2016年から18年には、医薬品、労働安全管理に係る職業病の防止と治療、医療衛生分野のエマージェンシーマネジメント、東洋医学などの分野でも視察・研修を実施し、2018年、江蘇省医療衛生部門の責任者である譚頴主任の訪日に際して、JICEは日中共通の課題である高齢化と医療に関する視察を企画・実施しています。

 今回の式典・フォーラムは、COVID‑19により2020年以降の相互往来が停止している中、これまでの交流を振り返り、将来を展望する場にしようと準備してきました。江蘇省側はオンライン・オフラインのハイブリッド、日本側はオンラインで実施し、これまで研修に参加した医師や日本側指導医を中心に、約100名が一堂に会しました。

 記念式典では、江蘇省衛生健康委員会 朱岷副主任より10年間の交流の総括とともに、今後も全方位的な多次元の協力を通じ、中日両国の健康福祉増進やグローバルヘルス・ガバナンス推進のため、ともに新たな貢献をしていきたいとの話がありました。また江蘇省人民対外友好協会 銭文華副会長より、江蘇省の医療発展の推進、友好の実践、医療機関同士の国際交流を今後も継続しようという提言がありました。JICE吉田耕三理事長は、厳しい選考を経て派遣された優秀な先生方が、帰国後に臨床治療や研究分野で研修成果を発揮し、活躍されているだけでなく、日中間の相互理解のための重要な役割も果たしていることに言及し、日本の受入病院や江蘇省の関係各所に改めて感謝の意を表するとともに、今後、日中両国が相互に学びあい補いあう存在になっていく中で、JICEは研修形態や研修地域の多様化など、更なる人材育成や互恵関係構築の枠組み作りを目指すというメッセージを発しました。

 また、日本の受入病院医師を代表し、松本健史先生(日本橋室町三井タワーミッドタウンクリニック※研修受け入れ時は順天堂医院消化器内科 准教授)より研修当時の懐かしいエピソードのご紹介と「同じ思いを抱けば国籍など関係なく仲間になれる。新型コロナで対面交流が途絶えているが、雨は必ず止む」との心強いお言葉がありました。江蘇省医師代表の周暁俊先生(蘇州大学附属第一病院 胃腸外科副主任)は、2015年の日本研修の際、指導医の配慮で、当時まだ所属病院には導入されていなかった「ダヴィンチXi」を学ぶ機会を得、5年後に中国で資格取得、その後のロボット手術100件達成の記念式典で、「東京で初めてロボットと出会った時のことを思い出し、感無量だった」と帰国後の研鑽の成果を紹介しました。また、徐澤寛先生(江蘇省人民病院 一般外科主任・胃腸外科センター長)が江蘇省の医療の現状とともに、研修参加医師の帰国後の活躍ぶりを紹介されたほか、上塚芳郎先生(一般財団法人松本財団 顧問・医師、JICE評議員)はJICEと江蘇省の医療交流における意義と可能性について言及され、今後の交流方法や共同研究のテーマなど、日中医学交流について提言をくださいました。

 日中医学交流フォーラム記念講座では、日中双方の消化器内・外科の医師がそれぞれの分野における取り組みについて講演を行いました。日本側からは、座長の土田明彦先生(牧野記念病院 院長、JICE評議員)、須並英二先生(杏林大学医学部 消化器・一般外科 下部消化管外科 教授)の進行のもと、後藤田卓志先生(日本大学病院 消化器病センター・消化器内科 教授)、斎藤豊先生(国立がん研究センター中央病院 内視鏡センター長)、深川剛生先生(帝京大学医学部附属病院 上部消化管外科 教授)、齋浦明夫先生(順天堂大学医学部附属順天堂医院 肝・胆・膵外科 主任教授)が登壇され、和やかな雰囲気の中、参加者と活発なディスカッションを行いました。多くの参加者にとって懐かしい顔ぶれとの再会の場となっただけでなく、中国の若手医師が日本の医療技術に触れる貴重な機会となりました。

 JICEは、今回の式典・フォーラムを新たな契機とし、引き続き江蘇省衛生健康委員会とともに、対面研修の早期再開実現と医療・衛生分野の事業推進に尽力してまいります。

                                            研修事業部国際研修課兼務      
総務部中国室 浅野 智美 記

研修当時の内視鏡指導の様子を紹介(松本健史先生)
「日本研修は医師人生のハイライトの一つ」と振り返る(周暁俊先生)
研修に参加した医師たちは帰国後112の新しい技術・新しい診療方法を生み出し、            SCI論文232本を発表するなど、江蘇省における専門技術の発展、臨床技術の向上に寄与した(徐澤寛先生)
「日中間には医療交流に有利な条件が揃っている」とその意義と今後の方向性について提言(上塚芳郎先生)
           記念講座の質疑応答では「AIは医師の手による内視鏡にとって代わるか」       などについて忌憚のない意見が交わされた
              記念講座には研修に参加した江蘇省医師も登壇               写真は江蘇省人民医院 一般外科主任 楊力先生(2016年来日)
質疑では何宋兵先生(蘇州大学附属第一病院 一般外科/2017年来日)らが壇上に
       消化器内科・外科それぞれ、日中双方の座長に会の進行と取りまとめ役をお願いした     写真は消化器外科分野の蘇州大学附属第一医院 一般外科 趙鑫先生(左、2018年来日)と須並英二先生
江蘇省衛生健康委員会 対外協力交流処 李郁処長が 「対面交流の早期再開が双方の願い」と締めくくった