2023年11月、JICEはne'ma(アラブ首長国連邦食品ロス削減イニシアティブ)と連携し、アラブ首長国連邦(UAE)にて子ども向け食品ロス削減啓発プログラムを実施しました。
ne'ma(ナーマ)はムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンUAE大統領のビジョンに基づき、2030年までにUAE国内における食品ロスの量50%削減を目標に活動しています。
UAEを含む湾岸協力理事会(GCC)諸国では、急速な都市化や人口増加、生活水準の向上等により、毎年1,000万トンの食品が廃棄されており、COP28の議長国であるUAEも食品ロス問題の解決に向けて取組んでいます。その活動の1つとして、UAEで人材育成事業を展開するJICEがne'maのパートナーとして児童・生徒を対象とした教育の分野で参画することとなり、食品ロス削減啓発プログラム"7 Days - ne'ma Diary Document Food Waste @ Home(7 Days - ne'ma Diary)"を実施しました。
本プログラムは、環境省の「7日間チャレンジ!食品ロスダイアリー (env.go.jp)」や消費者庁の「食品ロス削減:啓発用冊子/計ってみよう!家庭での食品ロス (caa.go.jp)」など日本の取組みの好事例に着想を得ています。2023年11月3日から11月15日に、アブダビ首長国にある私立学校Yasmina British Academyの協力の下、この取組みに興味を持った同校のYear 7(日本の小学6年生に相当)の生徒約30名が参加しました。
【導入学習】
参加生徒を対象としたオリエンテーションでは、食品ロスに関するレクチャーを行いました。食品ロスが環境や社会に及ぼす影響について学び、なぜ削減に向けた取組みが必要か理解を深めることを目的としています。生徒からは「UAE国内で廃棄される食品の多さに驚いた」という声が聞かれました。
【チャレンジ】
参加者は、オリエンテーション翌日の11月4日から1週間にわたり、「7 Days - ne'ma Diary」と題したオンライン掲示板に食べ残しの量、写真、食べ残した理由を記録しました。記録すると、食べ残しによって排出されるCO2量等のデータが表示されます。参加者は自身の食べ残しが環境に与える影響の大きさをこのチャレンジを通して学びました。
【UAE気候変動・環境大臣からの評価】
11月15日に実施された表彰式には磯俣秋男駐UAE特命全権大使にもご出席いただき、日本の社会に根付く食べ物を大切にする教育がUAEの食品ロス削減に貢献することへの期待が述べられました。UAE側の反響も大きく、マリアム・ビント・ムハンマド・アルムハイリUAE気候変動・環境大臣(当時)が高い関心を寄せ、表彰式に大臣自ら足を運び、代表生徒からの7 Days - ne'ma Diary についての説明に熱心に耳を傾けてくださいました。翌日ne’ma主催で行われたUAE第4回食糧安全保障対話の冒頭の挨拶でも本プログラムの取組みにふれ、「生徒たちは日々どのくらいの食事を残してしまうのかに気づき、7日間という短い期間でも削減啓発の効果がうかがえた。食品ロス削減に向けて協力して取り組むことが大切である。」と強調されていました。
【COP28での成果発表】
本プログラムの成功を受け、12月8日にUAEドバイ首長国のCOP28会場にて成果発表の機会が設けられました。
発表冒頭は、ne’ma統括のクルード・アルヌワイス氏によるne’ma及び7 Days - ne'ma Diaryの紹介、JICEスタッフによる本プログラム共同実施の経緯の説明がされました。日本の食品ロス削減分野の専門家である井出留美氏(株式会社office3.11代表取締役)にもビデオ講演という形でご参加いただき、食品ロスが地球温暖化に与える影響や解決策などについてわかりやすくご説明いただきました。その後、ne’ma Diaryの進め方、成果、体験してみての感想などについて代表生徒が発表し、100名ほどの観客を前に堂々とした態度で臨んでいました。
発表の締めくくりに、代表生徒の一人であるジアンカルロ・ナサニエルさんは「7 Days - ne’ma Diaryを通じて、私たちがいかに大量の食品ロスを出しているかということに気付かされた。この気づきを友達や家族に伝えて、みんなで一緒に取り組むことで、世界の食品ロスを減らしていくことができると思う。行動することで未来を良い方向に変えていける。」と真剣なまなざしで聴衆に語りかけました。
JICEとne'maは今後もさらに連携を深め、より多くの若者やコミュニティに向けて食品ロス削減の重要性を啓発し持続可能な未来を目指して協力してまいります。
国際研修部国際協力課 大前花奈、佐藤恵梨香